• ちびくろサンボ

ちびくろサンボ

ちびくろサンボ

  • ヘレン・バナーマン[作] /フランク・ドビアス[絵]
  • 定価800円+税
  • A5変 41ページ 上製
  • ISBN 4-7705-0199-4 C8798
  • 奥付の初版発行年月●2008年06月

●内容紹介

80年前アメリカで出版された美しい一冊の絵本。その絵本は、日本で120万部以上も売れた岩波書店版『ちびくろ・さんぼ』の原書となりました(現在は瑞雲舎より刊行されています)。ところが岩波書店版は、フランク・ドビアスが描いた印象的なイラストを大幅に改編したものだったのです。アールデコの流れをくむドビアスの力強いイラストは、その多くが一部をカットされ、反転され、合成されました。なかには収録されなかったイラストすらあります。
そのようなことが起こったのは、イラストを描いたフランク・ドビアスが消息不明になってしまったため、守られるべき著作権が守られなかったこと。岩波書店が『ちびくろ・さんぼ』を出版した1953年当時は、まだ著作権を重んじる意識が日本で低かったこと。横書きの絵本がほとんどなかったので、横書きの原書を縦書きにする必要があったことなどが原因です。
当時にしてみれば、しかたのないことだったのでしょう。けれども、大幅に改編されたがゆえに、『ちびくろ・さんぼ』は原書の持つ味わいを失ってしまいました。これほど長いあいだ『ちびくろ・さんぼ』を愛読し続けてきたのに、私たちはフランク・ドビアスの描いた本当のイラストを知らないままなのです。
そのうえ、著作権に対する意識がこれだけ高まっている昨今になってもまだ、フランク・ドビアスの絵を真似た、盗作とすら言えるような絵本が出版されています。
長年にわたって私たちを楽しませてくれたフランク・ドビアスに対する深い敬意を込めて、私たちは彼のイラストをできるかぎり忠実に再現。いまようやく、原書そのままの絵本を世に送りだします。岩波書店版(瑞雲舎版)には収録されなかった5点のイラストは、日本初公開。
子ども達に伝えたいのは、原書にしかない本物の味わい。いまは亡きフランク・ドビアスも、きっと喜んでくれることでしょう。

●版元から一言
差別絵本と言われ、日本中の出版社が一斉に『ちびくろサンボ』を絶版にしてから、早いもので、すでに20年が過ぎようとしています。
絶版の是非を問うた『『ちびくろサンボ』絶版を考える』(径書房編集部編)。
長年に渡って『ちびくろサンボ』を愛読してきたアメリカの黒人が、なぜその絵本を差別絵本として批判するようになったかを深く追求し、誰も指摘しなかった反差別運動の弊害をくっきりとあぶりだした『ちびくろサンボよ すこやかによみがえれ』(灘本昌久著)。
日本では一度も出版されたことがなかった、『ちびくろサンボ』の生みの親であるヘレン・バナーマンの原書『ちびくろさんぼのおはなし』(灘本昌久訳)。
この3冊が、これまでに私たちが出版してきた「ちびくろサンボ」の本です。
そしていま、ようやく、私たちは岩波書店版の元になったフランク・ドビアスの原書を世に送りだすこととなりました。
フランク・ドビアスが描いたアールデコの流れをくむイラストは、大幅に改編して作られた岩波書店版(瑞雲舎版)『ちびくろ・さんぼ』にはない深さと美しさがあります。

●著者プロフィール

ヘレン・バナーマン
Helen Bannerman 1862〜1946 イギリスに生まれる。マデイラ島で幼年期を過ごし、10歳で帰国。その後、医師と結婚してインドに渡った。自分の子どものために書いた『The Story of Little Black Sambo』が1899年にイギリスで出版され、やがて各国で刊行されたが、絵やテキストを改編したものが多い。日本では1999年に径書房が原書を刊行した。

フランク・ドビアス
Frank Dobias 1902〜? オーストリアに生まれる。ウィーンで美術を学び、16歳のとき、名作『リリオム』の舞台装置のコンクールで1等に入賞。映画の仕事などを経て、1924年ごろアメリカに帰化。『LITTLE BLACK SAMBO』をはじめ、おおくの絵本にイラストを描いた。ドビアスが影響を受けたアール・デコは、近年、再評価され、芸術作品として高い評価を受けている。没年は不明。